BUYMA(バイマ)の存在を知ったのは、仲良しの友達がバイマをしていると言っていたから。
バイマ?ナニソレ?
サイトを開いてもいまいち見方がわからないし、高級ブランドばかりが並んでいる。
センスのない私にはバイヤーなんて関係のない世界だと思っていた。
結婚したとき私は派遣で介護の仕事をしていて、9時〜16時まで週4日パートとして老人ホームで働いていた。
正社員の頃のように夜勤はないし、残業もないし、委員会のような面倒なものもない。定時になったらすぐに帰れるし、事前に伝えていたら連休だってもらえる。
正社員時代と比べると感動するほど働きやすかった。
妊娠しても規則的な時間帯で働くことができたのは助かったし、職場の周りの人からもサポートしてもらって楽しく働いていた。
ある日のお昼、妊娠したことで重いものを抱えることができなくなった私は、ある男性社員から体重60キロ以上の寝たきりのお年寄りを抱えるように言われた。
施設では入居者の食事の時間が決まっていて、食後は汚れた食器を乗せた配膳車を決められた時間内に厨房へ持っていかなければならない。
その時すでに他の入居者は食事を食べはじめていて、自分では起き上がることのできない寝たきりの入居者を椅子に座らせなければならなかったのだけど、その方は体重が重くて2人がかりで抱えないと持ち上げることができない。
他のスタッフは休憩中で、対応できるのは私しかいなかった。
それで、一緒に抱えて起こすよ。と言われた。
妊娠中に重いものを抱えるリスクはたくさんある。早産の危険、じん帯や関節のゆるみ。腹痛やお腹のはりなど身体への負担が大きい。加えて腰痛がある私は、重いものを持つ時に腰をかばうことで別の場所に圧がかかってしまう。
食事の時間が押してしまう状況はわかっていた。
一瞬迷ったけれど、
「すみません、ちょっと今は無理です。他のスタッフが戻ってくるまであと10分待ってもらえませんか。。」と伝えた。
その後その男性社員は、「ねぇ、重いの抱えれる人?」と休憩中のスタッフに大きな声で聞いてまわった。その声は少し意地悪に感じたけれど、仕方がない。
介護業界は人手不足だ。
私が人並みに動けないことで迷惑がかかる。
それまで他のスタッフから優しくされていたことに完全に甘えていた。
その時、私は主人の両親から、妊娠したことをきっかけにパートを辞めるようにと言われていた。介護は力仕事だからと心配されていた。
何度も言われて面倒だったから辞めたことにしていたけれど、この事件をきっかけに妊娠5ヶ月でパートを辞めることにした。
当時はまだ2人暮らしだったから旦那の給料だけでやっていけなくはなかった。
ただ、パート代が月8万円だったとしてもあるとないとじゃ生活が変わる。ギリギリのお金をやりくりして生活するのと、少し余裕があるのとでは全然違う。
子供が生まれたら支出は今よりも増えるし、老後に向けて貯金がないのも心許ない。
それに近所に遊ぶ友達はいないし、家にずっといるのは暇すぎる。遠くまで遊びに行くようなお金はない。
考えれば考えるほどつまらない未来が待っているような気がした。
新しい仕事を探すにも、女性が妊娠中に新しい仕事を探すのは不可能だ。
元々の働き先や知り合い(コネ)があれば、何か「お手伝い」できるかもしれないけれど、履歴書を書いて面接を受けて一から仕事を探して見つかるわけがない。
悪阻がひどくて仕事にならない。急に体調不良で休むかもしれない。仕事を覚えた頃に産休に入る。
そんな妊婦の需要なんてどこにもない。
妊娠中に私が働ける場所はバイマしかなかった。
時間をつぶせてお金も稼げる。
思えば一石二鳥の仕事だった。
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